守るべき相手(なのはSS:シグナム→はやて)
2005年11月23日 SS―冷たい、冷たい、闇の中であなただけを探している。
優しい瞳、優しい声。
すべてを受け入れてくれた、幼く、優しい主。
彼女を失ってしまったら、自分は一体どうなってしまうのだろう。
このままでは麻痺は進行し、いずれ彼女は。
それを食い止めるために、自分達は戦っているのではないのか。
わかっている。わかっている筈だ。
こうして戦っていれば、いつか彼女を助ける事が出来ると、守る事が出来ると、わかっている。
しかし、それは本当に“本当”の事なのだろうか。
不意に触れた頬が冷たい。ゾッとする。
いくら抱きしめて、暖めても、彼女の身体はこの場所の様に冷たいままだ。
強く抱きしめても、いくら頬を摩っても彼女は冷たいまま。
命が消えていくのを感じ、自分の身体までも冷たくなっていく。
―主はやて…!!!
はや…はやて…はやて…―!!!!
必ず守るから、いなくならないで…。
―……ナム…シグナム…。
小さな子供の声が呼んでいる。
優しい声が、冷たい世界を掻き分けて、こちらへ射して来る。
「シグナム!」
「…っ…!?」
耳元で大きな声を出され、シグナムはリビングのソファで目を覚ます。
額から汗がにじみ、呼吸が乱れる。肩に軽い重みを感じ、声のした方を向く。
「主…はやて…?」
「どうしたん?うなされてたけど…」
シグナムは主の姿を捉え、ハッとする。
優しい彼女は、自分達の痛みまで背負い込んでしまう性分だ。
そんな彼女に、自分は心配をかけてしまった。シグナムはどうしても申し訳なくて、隣に座ったはやてに頭を下げる。
「も、申し訳ありません!ご心配をおかけしまして…!」
いつも笑顔でいて欲しいのに、暗い顔をさせてしまった。シグナムの中に罪悪感が溢れ出る。悔やんでも悔やみきれない。
「そんなん気にしなくてええよー…?うちらは家族なんやから、うなされてたら心配するのは当たり前やろ?」
「うなされ…?」
はやてに暗い顔をさせてしまった事で頭がいっぱいで、自身がどんな状況だか、気付かなかった。
はやてに用意してもらった服が汗でぐちゃぐちゃだ。
「何か嫌な夢でも見たん?」
彼女が自分を少しでも楽にさせようと、笑っているのがわかる。いつもそうだ、彼女自身が辛くても、自分達に心配をかけない様に。自分が辛くても、心配してしまっていても、それによってこちらが心配しない様に。
シグナムは彼女にこんな事を言いたくはなかったが、言わなければ余計に心配されてしまう。
シグナムは観念して口を開く。
「…その…大変、失礼な事を申し上げます…」
「ええよ?私が話して言うたんやから」
本当にこんな事を言って良いのだろうか、と一瞬シグナムは押し黙る。
けれど、はやてはきっと受け止めてくれる。
自分は彼女の優しさに甘えてばかりだ。
闇の書の主を守るヴォルケンリッターのリーダーだというのに。
「あなたを…失う夢を……見ました」
はやてを守りきれず、失う夢を。
守ると誓ったのに、何も出来ず、失って、後悔して。
何よりも失いたくない存在なのに。
そう言うシグナムの表情を、はやては穏やかな顔で見つめていた。
「…っ、主はやて…!?」
スッと手が伸び、はやての腕がシグナムを包む。
シグナムが戸惑いの声をあげても、彼女は離さなかった。
「…大丈夫や…そんなん、ただの夢…闇の書の主・はやてはここにおる…」
はやての腕に力が入る。
小さな腕、小さな身体。
その小さな身体で、シグナムの身体を包み込む。
「私がみんなを守るから…だから、絶対に消えたりせえへんよ…」
暖かい。思わず彼女の身体を抱きしめ返す。
「ふふっ…何か、シグナムのお母さんになった気分やなー」
「っ、申し訳ありません!!!」
ポーカーフェイスが得意なシグナムの顔がカアっと赤くなり、はやてから離れようとしたが、彼女は離そうとしなかった。
ただこのまま。
―私達があなたを守ります。
―あなたの優しさにかけて…。
あの夢の様はさせはしない…。
―誰よりもあなたが愛しいから…。
END
優しい瞳、優しい声。
すべてを受け入れてくれた、幼く、優しい主。
彼女を失ってしまったら、自分は一体どうなってしまうのだろう。
このままでは麻痺は進行し、いずれ彼女は。
それを食い止めるために、自分達は戦っているのではないのか。
わかっている。わかっている筈だ。
こうして戦っていれば、いつか彼女を助ける事が出来ると、守る事が出来ると、わかっている。
しかし、それは本当に“本当”の事なのだろうか。
不意に触れた頬が冷たい。ゾッとする。
いくら抱きしめて、暖めても、彼女の身体はこの場所の様に冷たいままだ。
強く抱きしめても、いくら頬を摩っても彼女は冷たいまま。
命が消えていくのを感じ、自分の身体までも冷たくなっていく。
―主はやて…!!!
はや…はやて…はやて…―!!!!
必ず守るから、いなくならないで…。
―……ナム…シグナム…。
小さな子供の声が呼んでいる。
優しい声が、冷たい世界を掻き分けて、こちらへ射して来る。
「シグナム!」
「…っ…!?」
耳元で大きな声を出され、シグナムはリビングのソファで目を覚ます。
額から汗がにじみ、呼吸が乱れる。肩に軽い重みを感じ、声のした方を向く。
「主…はやて…?」
「どうしたん?うなされてたけど…」
シグナムは主の姿を捉え、ハッとする。
優しい彼女は、自分達の痛みまで背負い込んでしまう性分だ。
そんな彼女に、自分は心配をかけてしまった。シグナムはどうしても申し訳なくて、隣に座ったはやてに頭を下げる。
「も、申し訳ありません!ご心配をおかけしまして…!」
いつも笑顔でいて欲しいのに、暗い顔をさせてしまった。シグナムの中に罪悪感が溢れ出る。悔やんでも悔やみきれない。
「そんなん気にしなくてええよー…?うちらは家族なんやから、うなされてたら心配するのは当たり前やろ?」
「うなされ…?」
はやてに暗い顔をさせてしまった事で頭がいっぱいで、自身がどんな状況だか、気付かなかった。
はやてに用意してもらった服が汗でぐちゃぐちゃだ。
「何か嫌な夢でも見たん?」
彼女が自分を少しでも楽にさせようと、笑っているのがわかる。いつもそうだ、彼女自身が辛くても、自分達に心配をかけない様に。自分が辛くても、心配してしまっていても、それによってこちらが心配しない様に。
シグナムは彼女にこんな事を言いたくはなかったが、言わなければ余計に心配されてしまう。
シグナムは観念して口を開く。
「…その…大変、失礼な事を申し上げます…」
「ええよ?私が話して言うたんやから」
本当にこんな事を言って良いのだろうか、と一瞬シグナムは押し黙る。
けれど、はやてはきっと受け止めてくれる。
自分は彼女の優しさに甘えてばかりだ。
闇の書の主を守るヴォルケンリッターのリーダーだというのに。
「あなたを…失う夢を……見ました」
はやてを守りきれず、失う夢を。
守ると誓ったのに、何も出来ず、失って、後悔して。
何よりも失いたくない存在なのに。
そう言うシグナムの表情を、はやては穏やかな顔で見つめていた。
「…っ、主はやて…!?」
スッと手が伸び、はやての腕がシグナムを包む。
シグナムが戸惑いの声をあげても、彼女は離さなかった。
「…大丈夫や…そんなん、ただの夢…闇の書の主・はやてはここにおる…」
はやての腕に力が入る。
小さな腕、小さな身体。
その小さな身体で、シグナムの身体を包み込む。
「私がみんなを守るから…だから、絶対に消えたりせえへんよ…」
暖かい。思わず彼女の身体を抱きしめ返す。
「ふふっ…何か、シグナムのお母さんになった気分やなー」
「っ、申し訳ありません!!!」
ポーカーフェイスが得意なシグナムの顔がカアっと赤くなり、はやてから離れようとしたが、彼女は離そうとしなかった。
ただこのまま。
―私達があなたを守ります。
―あなたの優しさにかけて…。
あの夢の様はさせはしない…。
―誰よりもあなたが愛しいから…。
END
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