給料3ヶ月分?(なのはSS:ハラオウン兄妹&???×フェイト)
2006年1月14日 SS―闇の書事件が終わってから6年の月日がたった頃。
場所はハラオウン家の地球での住居。遊びに来たなのはは、フェイトが無くなったお茶っ葉を買いに出かけて暇なためか、居間で書類を読むクロノに話し掛けてきた。
「クロノくんクロノくん…あ、クロノくんじゃおかしいよね、艦長…」
「クロノで良いよ、今更呼び方変えられたって変な感じがするだけだろう?」
昔は執務官だったが、今は提督だ。いつまでも“くん”付けで呼ぶのはおかしいだろうと思い、呼び直すが、クロノは首を横に振る。
彼女やエイミィの“くん”付けはもう馴染んでしまっているから、こう呼び方を変えられたら呼びかけられても気付けなさそうだ。
「じゃあクロノくん」
「何か用なのか?」
ニコリと満面の笑みを浮かべるなのはに、クロノは上から2枚目の書類をめくり、尋ねる。
暇だから、なんて理由だったら、休日を潰して仕事を進めている最中なので、流石に怒るがそれ以外だったら、聞く耳を持ってやっても良いだろう。
「日本にはねぇ、娘さんを僕に下さい、って結婚の報告に来た娘さんの恋人を殴っちゃうお父さんの歌があるんだよ?」
「なのは、暇つぶしなら付き合わないぞ」
「娘さんを連れて行っちゃう君を拳一発で許してやるって歌なんだけどねぇ…」
「なのは!」
「クロノくんならS2U持ち出しちゃいそうだよねぇ〜」
「な!の!は!」
「わっ、どうしたの!?急に大きな声出して!」
「人の話を聞いてくれ、頼むから…」
クロノは何度も制止の声を上げた。それなのになのはが気付かなかったため、否応なしに大声を上げる事になったのだ。
以前から思っている事だが、彼女はいささかマイペースすぎじゃないだろうか。
「何が言いたいんだ、君は…」
「んーっとねえ…」
なのはが少し考え、口に出そうとした瞬間、バタン、とドアが勢い良く開く音がした。
「なのは!遅くなってごめん!」
「良いよー。リンディさんに頼まれたやつなんでしょう?」
「でも…ごめん…」
「良いよ、早く行こう!」
フェイトが帰ってきた途端、なのはの興味がクロノからそれる。
クロノの中に僅かに宿った憤りの炎をどうしてくれよう。
フェイトもやや怒り気味の兄に気付かず、頬を薄く染める。
「兄さん、帰りが少し遅くな…あっ、なのは待って!」
「クロノくん、またね〜」
少し帰りが遅くなるかも。そう言おうとした彼の妹は、友人の後を追い、行ってしまう。
明るい笑い声が玄関を抜けて、また部屋にはクロノだけが残る。
「何だったんだ…?」
なのはの言葉が呪縛の様に、クロノの胸に引っかかる。
「娘を連れて行く男を殴る父親の歌…?」
聞いた事もない話にクロノは首を傾げたが、書類が視界に入り、思考が現実に戻る。
今はなのはの事よりも、仕事が大切だ。
この書類に目を通せば、休日として休息を取れる。
今日はそれだけを目指せば良い。
―次の日。
「おはよう、兄さん」
「おはよう、クロノ」
ふたりの声がステレオ状態になって、キッチンに入ったばかりのクロノの耳に届く。
「おはよう、母さん、フェイト」
クロノはそう言って大きく欠伸をした。結局深夜までかかってこの様だ。
椅子に腰掛けると、ちょうどフェイトが学校に行く時間で、彼女は席を立つ。
リンディがフェイトに昼食用の弁当を持たせ、出かけていく。そんないつもの光景が彼の視界を覆った。けれど、何かが違う気がして、クロノは目を凝らす。
髪を切ったとか。
否、それは違う。いつも通りの長さの髪を、いつも通りの髪留めでくくっている。
「どうしたの?兄さん」
「あ、いや…」
クロノに凝視されるのを不信に思ったフェイとは彼に話し掛ける。
気のせいかと、と思った瞬間、違和感の正体が目に止まる。
流れる髪を押さえる左手に、薬指に、キラリと光る何かが。
「フェイト…どうしたんだ?その指輪…」
「…っ…」
フェイとの身体がビクッと上下に揺れる。
あからさま過ぎる動揺。そして、瞬時に赤くなる彼女の頬。
「な、何でもないの…っ」
クロノの視線から外れる様に俯き、走り去った。
兄として、これはどうすれば良いのか、判断がつかない。
(フェイトの左手の薬指に、指輪…?)
クロノは必死に自分の中から湧き出てくる最悪の事態から目をそらす。
「クロノー。そこのお皿とってちょうだーい。クロノー!」
リンディに呼ばれているのも気付かず、彼は目の前にあったトーストに手を伸ばした。
続く。
場所はハラオウン家の地球での住居。遊びに来たなのはは、フェイトが無くなったお茶っ葉を買いに出かけて暇なためか、居間で書類を読むクロノに話し掛けてきた。
「クロノくんクロノくん…あ、クロノくんじゃおかしいよね、艦長…」
「クロノで良いよ、今更呼び方変えられたって変な感じがするだけだろう?」
昔は執務官だったが、今は提督だ。いつまでも“くん”付けで呼ぶのはおかしいだろうと思い、呼び直すが、クロノは首を横に振る。
彼女やエイミィの“くん”付けはもう馴染んでしまっているから、こう呼び方を変えられたら呼びかけられても気付けなさそうだ。
「じゃあクロノくん」
「何か用なのか?」
ニコリと満面の笑みを浮かべるなのはに、クロノは上から2枚目の書類をめくり、尋ねる。
暇だから、なんて理由だったら、休日を潰して仕事を進めている最中なので、流石に怒るがそれ以外だったら、聞く耳を持ってやっても良いだろう。
「日本にはねぇ、娘さんを僕に下さい、って結婚の報告に来た娘さんの恋人を殴っちゃうお父さんの歌があるんだよ?」
「なのは、暇つぶしなら付き合わないぞ」
「娘さんを連れて行っちゃう君を拳一発で許してやるって歌なんだけどねぇ…」
「なのは!」
「クロノくんならS2U持ち出しちゃいそうだよねぇ〜」
「な!の!は!」
「わっ、どうしたの!?急に大きな声出して!」
「人の話を聞いてくれ、頼むから…」
クロノは何度も制止の声を上げた。それなのになのはが気付かなかったため、否応なしに大声を上げる事になったのだ。
以前から思っている事だが、彼女はいささかマイペースすぎじゃないだろうか。
「何が言いたいんだ、君は…」
「んーっとねえ…」
なのはが少し考え、口に出そうとした瞬間、バタン、とドアが勢い良く開く音がした。
「なのは!遅くなってごめん!」
「良いよー。リンディさんに頼まれたやつなんでしょう?」
「でも…ごめん…」
「良いよ、早く行こう!」
フェイトが帰ってきた途端、なのはの興味がクロノからそれる。
クロノの中に僅かに宿った憤りの炎をどうしてくれよう。
フェイトもやや怒り気味の兄に気付かず、頬を薄く染める。
「兄さん、帰りが少し遅くな…あっ、なのは待って!」
「クロノくん、またね〜」
少し帰りが遅くなるかも。そう言おうとした彼の妹は、友人の後を追い、行ってしまう。
明るい笑い声が玄関を抜けて、また部屋にはクロノだけが残る。
「何だったんだ…?」
なのはの言葉が呪縛の様に、クロノの胸に引っかかる。
「娘を連れて行く男を殴る父親の歌…?」
聞いた事もない話にクロノは首を傾げたが、書類が視界に入り、思考が現実に戻る。
今はなのはの事よりも、仕事が大切だ。
この書類に目を通せば、休日として休息を取れる。
今日はそれだけを目指せば良い。
―次の日。
「おはよう、兄さん」
「おはよう、クロノ」
ふたりの声がステレオ状態になって、キッチンに入ったばかりのクロノの耳に届く。
「おはよう、母さん、フェイト」
クロノはそう言って大きく欠伸をした。結局深夜までかかってこの様だ。
椅子に腰掛けると、ちょうどフェイトが学校に行く時間で、彼女は席を立つ。
リンディがフェイトに昼食用の弁当を持たせ、出かけていく。そんないつもの光景が彼の視界を覆った。けれど、何かが違う気がして、クロノは目を凝らす。
髪を切ったとか。
否、それは違う。いつも通りの長さの髪を、いつも通りの髪留めでくくっている。
「どうしたの?兄さん」
「あ、いや…」
クロノに凝視されるのを不信に思ったフェイとは彼に話し掛ける。
気のせいかと、と思った瞬間、違和感の正体が目に止まる。
流れる髪を押さえる左手に、薬指に、キラリと光る何かが。
「フェイト…どうしたんだ?その指輪…」
「…っ…」
フェイとの身体がビクッと上下に揺れる。
あからさま過ぎる動揺。そして、瞬時に赤くなる彼女の頬。
「な、何でもないの…っ」
クロノの視線から外れる様に俯き、走り去った。
兄として、これはどうすれば良いのか、判断がつかない。
(フェイトの左手の薬指に、指輪…?)
クロノは必死に自分の中から湧き出てくる最悪の事態から目をそらす。
「クロノー。そこのお皿とってちょうだーい。クロノー!」
リンディに呼ばれているのも気付かず、彼は目の前にあったトーストに手を伸ばした。
続く。
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