禍つ風(幻水SSS:?主&リオン)
2006年1月28日 SS―…風が吹いた。
「王子…!王子…!?」
芯の強い声。
黒い髪が赤い髪留めと一緒に風に吹かれる。
少女は自身が仕えておる主を探し、青く茂った草むらを走る。
踏まれた雑草は、まだ元気で。
「王子!」
「……」
「リムスレーア様から手紙が届きましたよ、楽しみになさっていたのではないのですか?」
返事は無い。
「王子?」
「……うん」
その瞳は冷たく、主を刺す。
曇り空の瞳が開かれ、黒髪の少女を映した。
彼とは対照的な爽天の瞳が、曇り空によって曇っていく。
彼女はそれに気付かない。
「王子…起きていらっしゃったのなら、すぐに返事していただきたいと…」
「わかったよ、リオン…」
赤い装束が翻る。
雲は暗く、爽天を隠す。
―まるで緑に広がる深紅が、一瞬、血の様見えた。
「王子…?」
「…嫌な予感がする……」
そう一言、呟いただけ。
風が、ほんの少し強く凪いだだけ。
END
「王子…!王子…!?」
芯の強い声。
黒い髪が赤い髪留めと一緒に風に吹かれる。
少女は自身が仕えておる主を探し、青く茂った草むらを走る。
踏まれた雑草は、まだ元気で。
「王子!」
「……」
「リムスレーア様から手紙が届きましたよ、楽しみになさっていたのではないのですか?」
返事は無い。
「王子?」
「……うん」
その瞳は冷たく、主を刺す。
曇り空の瞳が開かれ、黒髪の少女を映した。
彼とは対照的な爽天の瞳が、曇り空によって曇っていく。
彼女はそれに気付かない。
「王子…起きていらっしゃったのなら、すぐに返事していただきたいと…」
「わかったよ、リオン…」
赤い装束が翻る。
雲は暗く、爽天を隠す。
―まるで緑に広がる深紅が、一瞬、血の様見えた。
「王子…?」
「…嫌な予感がする……」
そう一言、呟いただけ。
風が、ほんの少し強く凪いだだけ。
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