秘密(バレセカSS:慶遼前提慶介&葵/マガより再掲)
2007年2月16日 SSバレンタインとは、芸能プロダクションにとっては鬼門だった。
まさしく鬼のようにチョコレート等々、プレゼントやら何やらが届くからである。
そのまま所属俳優達に渡す訳にはいかず、社員総出でチェックをしなければならない。
生チョコや手作り系の製菓はこの時期危険だ。
例年、堀之内プロダクションも同様で、社長である慶介まで手伝わなければいけなかった。
だが、今年は慶介は講師業があるために、大半の作業を手伝うことは出来なかった。
葵の視線が痛い。
講師の仕事が終わった後、こうして手伝っているのだが、それでも葵は甘くない。
次の日も、送れて届いたプレゼントをし分けるのも手伝った。経費削減のためとはいえ自分は曲がりなりにも社長なのだから、ここまで厳しくされると泣きたくなる。
社長なのに、貰えたチョコレートは約6つ。
1つは、翼がいつものお礼にと、勝也と一緒に捜しに行ったという美味しくも安価なチョコレート。
もう1つは、健作の濃い愛が詰まった高級チョコレート。高価過ぎて彼のご両親に申し訳なくなる。本当は手作りのチョコレートを送りたかったそうだが、失敗したらしく断念したそうだ。正直、健作の手作りは惚れ薬とかそういう類いのものが入っていそうで怖い。
もう3つは、勝也から貰ったカカオ99%含有のチョコレート。健康のためとは言っていたが、3枚も渡すあたり半分くらいは嫉妬が含有されている気がする。
―もう1つは…。
「ほーりのうちぃー……浮かれてないで、これチェックしてぇー?」
「はっ、はい!もう、浮かれてません!」
はっきり言って浮かれていた。
葵の視線が本当に痛い。自業自得とはいえ、本当に痛い。胃の痛みを誘発してしまいそうな痛みだ。
ジトリと睨む葵にビクビクする。―社長なのに…。
「好きな子からチョコ貰ったからってどうして3日も浮かれてられるのさ?」
「あっ、いやっ、もう浮かれてませんっ!」
「自分の顔がどれだけ赤いかわかってる?」
「えぇっ!?」
慶介に指摘しながら葵はテキパキと危険と判断したものを片付ける。うっかり痛んでしまったちゃんとしたファンからチョコには事務所から事務的な、けれど来年からは気をつけてねと一言書かれたカードを送り返せるよう分別し、嫌がらせ目的のものは問答無用に処理をする。
その間、慶介は鏡を探すだけしか出来なかったというのに。
「あぁ〜…本当に赤い……」
「しっかりしてよねぇ」
葵はバレンタイン当日に手伝わなかったから怒っているのではない。
「君達の事がバレたら、スキャンダルもいいとこだよぉ?」
「はっ、はい!!気をつけます!!」
そう、葵が怒っているのは自分が生徒と付き合っている事についてだ。
―つまり、この理不尽な量のノルマも、当日手伝わなかったからとかではなく、端から慶介の分とあてがわれる予定のものだったのだ。
元アイドルの芸能プロダクション社長兼芸能人養成所講師が、教え子のひとりとデキているなんて、世間的には許されない。
それも、二郎と葵の定義するところの“デキてる”的行為も付随している仲なので余計に。
彼が18歳であるから、ギリギリのところで児童淫行で捕まる事はないが、やはり許される仲ではない事だと承知している。
知られたら、もう側にはいられない。
―彼とは秘密の恋人なのだ。
それなのに。
「ところで、何で僕達の事知ってるんですか!?」
「橘くんから聞いた」
ならば、その美雪はどうして知っているのだろう。
謎だ。
「まぁ、どうでも良いけど」
「どうでも良くないです…」
彼が自分から言う訳もないし、どうしてバレたのだろう。
慶介がそう悩み込むと、葵が再び睨み付けて来る。
「絶対にバレれないようにね!」
「わっ、わかってます!!」
「ぴよっぴ先生に迷惑がかかるから!!」
「そうですね、姉さんにも迷惑が…って会社の心配はぁっ!?」
葵らしい指摘と言えばそうだが、他にもツッコむところはあるだろう。
例えば、会社とか会社とか会社とか、養成所とか養成所とか徳川理事長とか。
特に理事長が怖い。
その後、慶介のデスクにはチョコレートの山がもう二山増え、大切なチョコレートが埋まってしまった。
そのお陰で作業能率は上がったが、慶介は申し訳なくて泣きに泣いた。
―やっぱり、当日に手伝わなかったから…という苛めも含まれているのかもしれない。
END
まさしく鬼のようにチョコレート等々、プレゼントやら何やらが届くからである。
そのまま所属俳優達に渡す訳にはいかず、社員総出でチェックをしなければならない。
生チョコや手作り系の製菓はこの時期危険だ。
例年、堀之内プロダクションも同様で、社長である慶介まで手伝わなければいけなかった。
だが、今年は慶介は講師業があるために、大半の作業を手伝うことは出来なかった。
葵の視線が痛い。
講師の仕事が終わった後、こうして手伝っているのだが、それでも葵は甘くない。
次の日も、送れて届いたプレゼントをし分けるのも手伝った。経費削減のためとはいえ自分は曲がりなりにも社長なのだから、ここまで厳しくされると泣きたくなる。
社長なのに、貰えたチョコレートは約6つ。
1つは、翼がいつものお礼にと、勝也と一緒に捜しに行ったという美味しくも安価なチョコレート。
もう1つは、健作の濃い愛が詰まった高級チョコレート。高価過ぎて彼のご両親に申し訳なくなる。本当は手作りのチョコレートを送りたかったそうだが、失敗したらしく断念したそうだ。正直、健作の手作りは惚れ薬とかそういう類いのものが入っていそうで怖い。
もう3つは、勝也から貰ったカカオ99%含有のチョコレート。健康のためとは言っていたが、3枚も渡すあたり半分くらいは嫉妬が含有されている気がする。
―もう1つは…。
「ほーりのうちぃー……浮かれてないで、これチェックしてぇー?」
「はっ、はい!もう、浮かれてません!」
はっきり言って浮かれていた。
葵の視線が本当に痛い。自業自得とはいえ、本当に痛い。胃の痛みを誘発してしまいそうな痛みだ。
ジトリと睨む葵にビクビクする。―社長なのに…。
「好きな子からチョコ貰ったからってどうして3日も浮かれてられるのさ?」
「あっ、いやっ、もう浮かれてませんっ!」
「自分の顔がどれだけ赤いかわかってる?」
「えぇっ!?」
慶介に指摘しながら葵はテキパキと危険と判断したものを片付ける。うっかり痛んでしまったちゃんとしたファンからチョコには事務所から事務的な、けれど来年からは気をつけてねと一言書かれたカードを送り返せるよう分別し、嫌がらせ目的のものは問答無用に処理をする。
その間、慶介は鏡を探すだけしか出来なかったというのに。
「あぁ〜…本当に赤い……」
「しっかりしてよねぇ」
葵はバレンタイン当日に手伝わなかったから怒っているのではない。
「君達の事がバレたら、スキャンダルもいいとこだよぉ?」
「はっ、はい!!気をつけます!!」
そう、葵が怒っているのは自分が生徒と付き合っている事についてだ。
―つまり、この理不尽な量のノルマも、当日手伝わなかったからとかではなく、端から慶介の分とあてがわれる予定のものだったのだ。
元アイドルの芸能プロダクション社長兼芸能人養成所講師が、教え子のひとりとデキているなんて、世間的には許されない。
それも、二郎と葵の定義するところの“デキてる”的行為も付随している仲なので余計に。
彼が18歳であるから、ギリギリのところで児童淫行で捕まる事はないが、やはり許される仲ではない事だと承知している。
知られたら、もう側にはいられない。
―彼とは秘密の恋人なのだ。
それなのに。
「ところで、何で僕達の事知ってるんですか!?」
「橘くんから聞いた」
ならば、その美雪はどうして知っているのだろう。
謎だ。
「まぁ、どうでも良いけど」
「どうでも良くないです…」
彼が自分から言う訳もないし、どうしてバレたのだろう。
慶介がそう悩み込むと、葵が再び睨み付けて来る。
「絶対にバレれないようにね!」
「わっ、わかってます!!」
「ぴよっぴ先生に迷惑がかかるから!!」
「そうですね、姉さんにも迷惑が…って会社の心配はぁっ!?」
葵らしい指摘と言えばそうだが、他にもツッコむところはあるだろう。
例えば、会社とか会社とか会社とか、養成所とか養成所とか徳川理事長とか。
特に理事長が怖い。
その後、慶介のデスクにはチョコレートの山がもう二山増え、大切なチョコレートが埋まってしまった。
そのお陰で作業能率は上がったが、慶介は申し訳なくて泣きに泣いた。
―やっぱり、当日に手伝わなかったから…という苛めも含まれているのかもしれない。
END
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