※この話はもし、六聖獣側がゼウスに勝利し、ルカが大神の座についたら…という話が前提です。
ゼウス・ヘラ以外の神々、聖者の存在を排除し(いなかったことにして)、純粋にパワーゲームとしての戦争をし、ゼウスはルカの手によって葬られ、彼が大神につき、彼に寄り添い女神のような立場である事からレイが女神と呼ばれています。パンドラとシヴァは色々あった末、くっついてラブラブです。同居もしちゃってます。
原作に喧嘩売るような話ですが、それでも良いと思われる方だけスクロール願います。






























































「ルカがあなた達のどちらかと浮気していると言う噂は本当ですか!?」

何を突然。
珍しく、隣り合わせで―口論しながら―歩いていたパンドラとカサンドラにレイ――通称女神様は突然妙な事を言い出した。



レイが言うには昨日今日と極最近、この様な噂が流れているらしい。

―今の大神は先の大神のように神官達を侍らしているらしい。しかも、女神様が部屋を訪れても姿は見えず、神殿の外で熱い吐息を吐いていたとかいないとか。



今も大神達は何かと忙しい。
レイが仕事の合間を縫ってルカの部屋を尋ねても、姿が見えないという話はパンドラとカサンドラの耳にも薄っすらと届いていた。
少ない空きの時間を利用して、少しでも側にいたいとレイは願っているのにそれも適わないと。

確かに、大神と通称女神は逢う事もままならないくらいの状況では有るし、ふたりは先の大神に神官として侍っていた。
だが、今も周りから神官と呼ばれていてるが、実際している仕事は神殿での内仕事だけであって、ルカに侍っているわけではない。
そんな以前と変わらないことをしようものなら、ルカの逆鱗に触れるは、レイからアイスブレードを食らうは、きっとろくなことはない。
根も葉もない噂だ。
レイだってそれはわかっているはずだ。だが、感情がそれについていっていないらしい。


「昨日も一昨日もその前の晩もシヴァをこの腕に抱いて寝ましたが何か?」
パンドラが口にしたのは紛れもない事実だが、もう少し包み隠しても良いのではないのだろうか。
しかも、笑顔だが、声が笑っていない。
もう少し体裁を気にした方が良いのだろうか、以前と違って猫を被るつもりが無いパンドラは時折大胆だ。
「私にはパンドラ殿という想う相手がいるので」
「わかってはいるんです!!あれだけ神殿内や神殿の側でシヴァとあれだけイチャイチャイチャイチャしまくって!!ああっぼくだってルカとイチャイチャしたいですよ!!ムカつくったらありませんっ!!そうじゃなくて!!」
「私はシヴァがいれば良いですから。ルカ殿なんてレイ殿にのしつけてぽいですよ。」
「ルカがあなたのものであるかのように言わないで下さい!!腹が立ちます!!」
渾身捨て身ギャグ―ただし90%本気―を繰り出したカサンドラを、ふたりは変な口論に移り出し、無視をした。ツッコミが無いボケほど空しいものは無いと言うのに。
「そんな事より!!あああっ、もうっルカあ〜っ!!」
カサンドラを放置して口論を始めたと思い始めたら、いきなりレイが泣き出す。
もうどうしたら良いのかわからない。


大体、こんな噂、シヴァの耳に触れたら。


――――…触れたら?



公式設定→嫉妬深い、なシヴァはどんなリアクションを示すか。
怒るだろうか、泣くだろうか、平静を装うだろうか。
想像するだけでゾクゾクしてきた。
可愛い。何もかもが可愛すぎる。
今すぐ帰って、この目で見たい。

そう思い立ってすぐのことだった。


「私は帰りますが、後は宜しく頼みますよ?カサンドラ」
「えっ?ちょ…パンドラ殿!?」
「ルカぁ〜っ!!」

パンドラは泣いているレイも、パンドラの思考回路が読めずに困惑するカサンドラも見捨てて、神殿出口へと足を向ける。
まだ仕事だって終わっていないし、女神と呼ばれるような存在を見捨てて良いものでもないが。


―だって、大神より通称女神様より、シヴァが大切ですから♪



パンドラの足取りは軽かった。






いそいそと家に帰ってみると、中は良い匂いが立ち込めていて無意識に口角が上がる。新婚家庭とはこんな感じかと、以前のパンドラからは考えられないくらいのアホな思考が彼の脳裏を過ぎる。

「シーヴァー」
―思考にあわせて語調までアホ。
語尾にハートマークでもつきそうだ。
嬉しそうな顔のパンドラとは違い、嫌そうな顔や不機嫌な顔が見えるはずだった。
それが見たくて、パンドラは帰ってきたのだ。
けれど、実際は。

「おかえり、今日は早かったね」

―あれ?

いつも自分を迎えてくれる、穏やかな笑顔。
平静を装っているわけではない。シヴァのそんな顔は本音丸出しで、そこを突付けば怒り出す。ソレがお約束。ソレがセオリー。
てっきり怒っていると思っていた。てっきりむくれていると思っていた。拗ねた顔が見たかった。
―何故ならそれがシヴァに愛されていると言う証拠だから。

「シヴァ………ルカ殿の噂について知っていますか?」
もしや、知らないのではと思い尋ねてみる。
「あの浮気疑惑だろ…?知ってるけど…」
知っている。

―あれ?何この予想外の展開………


パンドラの胸に絶望に似た、感情が湧いてくる。――大袈裟。
先ほどのレイではないが、今すぐ泣きたい。――これは本当。

「シヴァは私の事を愛していないのですね!?」

「はあっ!?何でいきなりそうなるんだよ!!!」

自分自身でも、アホな言い草だと思った。
けれど、素直な感情は止まらず、口から次から次へと零れ落ちてくる。

「私はシヴァが嫉妬してくれていると思って泣いてるレイ殿を放置して、まだ仕事が終わってないのに帰ってきたと言うのに!!!!」
「だから何でそうなるんだよ!!ていうかレイはともかく、仕事はちゃんと終わらせろよ!!」
「よりにもよって“大神”ルカ殿と噂が立っているんですよ!?少しくらい気にかけてくれても良いじゃありませんか!?ちょっと前までゴウ殿とちょっと仲良く喋っているからって涙目になって怒っていたくせに!!」
「なっ!!最近は我慢してるだろ!!」

―最近、妙に大人しいと思ったら…

わざわざ我慢していると言うシヴァの言葉には、心臓を直撃するほどときめいた。
けれど、口からはいらない言葉ばかりが溢れていく。
口喧嘩をしたくて仕事もレイも放り出して帰ってきたわけではない。
ゴウ相手の場合は嫉妬してくれるのに、ルカ相手の場合は何故スルーなのか。

「ルカ殿相手だったら浮気は許すとでも言うんですか!」
最早、言っている事は無茶苦茶だという自覚はある。だがしかし、どうしても納得がいかないのだ。
「あの方が、"大神”だからですか…だから…っ」
「ふざけるな…!」

乾いた音が耳に届く。――頬を叩かれたと気付くのに時間がかかるほど混乱していたのだと自覚すると、中々恥ずかしいものがある。

パンドラが取り繕うとする前にシヴァの瞳の涙が溜まり、今にも零れ落ちそうだった。
「お前…馬鹿じゃないのか……許せるわけ、ないだろ…っ!」
そう言い終わる頃にはもう、ボロボロと涙は零れていた。
「ルカには、レイがいるから…っ………いつも一緒にいて、羨ましいって思ってたから…っ、だから………っ」
だから、疑う余地なんてなかっただけだ。
自分がそんな風に思っているとでも思っているのかと子供の様にパンドラの胸を叩き、泣いて訴えるシヴァの姿に心が痛んだ。

「ごめんなさい…」
―酷い事を言った。
勝手な事を言って、勝手に怒って、勝手にシヴァの気持ちを決め付けた。
見たかった顔はこんな顔じゃない。
抱きしめても、シヴァの嗚咽は止まらず、こちらの心臓も痛みが治まらない。


―どうすれば泣き止んでくれるのか、それすらもわからなくなって、何をしでかしたかは………聞かないで欲しい。











――一方、神殿では。





女神と言う通称があまりにも似合う美丈夫が、眉間に皺を寄せていた。
大神の部屋で、大神が休息を得るためだけに使っているはずの寝具に腰をかけて、真っ赤に腫れた目から涙を零していた。
あれだけ泣いたと言うのに、まだ泣ける。
レイは、ルカを信じていたいのだ。彼を愛しているし、愛されている自信だってある。
けれど、不安で仕方がなかった。

「ルカ…ぁ…っ」

涙が止まらない。―――そんな時だった。


扉が開く重い音がして、レイは顔を上に上げる。
涙で霞んだ視界では、誰が入ってきたかは判別出来ない。判別出来なくても、こんな夜遅くに大神の部屋をノックもなしに入ることが出来るのは大神――ルカの他ならなかった。

「レイ…!」
「る、ルカ…っ」

ガシャンッと、嫌な音がルカの声に次ぎ、レイの耳に届く。
真っ直ぐレイに駆け寄ってくるルカはそんな事には構わなかった。
何故泣いているのか、どうしてこんなに目が赤くなるまで泣いていたのだと捲くし立てる。

―心配してくれているのだという事はわかっている。
けれど、どうして自分が泣かせたのだと気付いてはくれないのだろう。

「る…」
「る?」
美しい顔にバランス良く配置されたルカの双方の瞳が丸くなる。

「ルカのばかあああっ!!!!」



自身の声が耳に響く。―耳がキンキンする。
レイの前方にいて、直撃を食らったルカも堪ったものではないだろう。
そんな事も気にせず、レイは泣きじゃくった。

「どうして…どうしてっ、いつも…何処かに行っちゃうですかっ!ぼくはいつでもルカと一緒にいたいのに…っ、ルカがいなくちゃ…ぼくはどうすれば良いんですか・…!どうして、他の人のところに行っちゃうんですか…!?」

わんわん泣きながら、レイは問う。
浮気しているのか、浮気じゃなくて本気なのか、相手は誰なのか。
浮気の一件が事実なら、そんな事は聞いても無意味だとわかっていた。けれど、口から零れて止まらず、涙も止まらなかった。
ルカは、そっとレイの肩を抱き、逆に問いかけ返してきた。
「レイ…それは……何の事だ?」
「しらを切るって言うんですかっ!?今、もっぱら噂ですよ!大神が…っ、ルカがぼく以外の誰かの元へ通っているって!!」

「え………?」

本気で驚いた声だった。
普段の彼からは決して漏れない、素の反応。何処となく情けなくて、多分レイ以外誰も知らない。
抱き寄せるルカの腕を跳ね除けて、追求し続けようとしたレイまで呆然とする。

「…………そんな噂が流れているのか?レイ…」
「はい…『今の大神は先の大神のように神官達を侍らしているらしい。しかも、女神様が部屋を訪れても姿は見えず、神殿の外で熱い吐息を吐いていたとかいないとか。』と…」
思わず、レイも釣られて呆けて、返答してしまった。
レイの言葉に、ルカは何とも言えない表情を作る。
呆れた様な、悩んでいる様な、そんな表情。



ルカ曰く、事の真実はこうらしい。
――ルカは確かに、夜、部屋を出て誰かの元へ向かった。
その誰かとは、他でもないレイの元へだった。
少しの暇が出来る度に、レイの元を尋ねたが、姿はなかった。不器用なルカが茶器を用意して、自分同様忙しいレイを労おうと頑張ったが、肝心のレイは毎回いなかった。
忙しいのだろうと、少し寂しい気がしたが、至らない自分のために頑張ってくれているのだと思うと、情けないと思いつつも嬉しかった。
だが、それも続けば、少しどころではなく、とても寂しく思えて、最近では朝方、神殿の外に出て溜息ばかり、吐いていた。

―そう、全ての原因は言葉通りの『すれ違い』。

ルカに会いたくて部屋を出たレイ。
レイに会いたくて部屋を出たルカ。

蓋を開けてみれば、何の事もない事実だった。

疑ってしまった自分が恥ずかしいと再び泣きそうになるレイを、ルカは抱きしめた。

この温もりを感じたのは、一体いつぶりだろうか。そんな事よりも、今あるこの時間が、抱擁が大事だったレイは、瞳を閉じた。







――――翌朝、目覚めたレイが手を怪我しながら割れた茶器を片付けようとしたルカを叱りつけたのは、ふたりだけの内緒の話。



END













〜おまけ〜

「うーっ、お腹空いたよー…」
「あははは…」
「みんなみんなお前が悪いんだぞーっ!!」
耳に届く、シヴァの――枯れた声の罵倒が心地よい。
そう、自分が全部悪い。シヴァの目が赤いのも、シヴァの喉が枯れているのも、折角シヴァが好物を作ってくれていたのに焦がしてしまったのも、全部自分が悪い。
全部自分が悪いのだから、罵倒は当然だし、その罵倒が全部自分に向けられる事が、心地よくて堪らない。
気のない返事をしたものだから、シヴァの眉が釣り上がる。けれど、起き上がってまで罵る体力が残っていないらしく、彼は寝台に身体を預けたままだ。
何度が起き上がろうと試みては倒れていくシヴァに流石に罪悪感を覚え、パンドラは立ち上がる。
「私が何か作ってきましょうか?」
「ダメ。」

―即答。
別に、シンやルカの様に壊滅的に不器用だと言うわけではない。もしそうであったら、粗相をして、神官長の座についていられなかった筈だ。
けれど、何故か何かを作ろうとする度にシヴァに止められる。
どうしてなのだろう。

「……台所に、良いから…ここにいて」


不意打ちの胸キュン。

事実は、ガラムマサラやらオクラやらをチョコレートの中に混入するパンドラに料理を作らせたくないだけであったが――この後、パンドラがシヴァに何をしたかはやはり内緒の話。




〜おまけEND〜

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